エロ注意報発令。 問題ない方のみスクロール ↓ ↓ ↓ かわいくない花 小走りに廊下を走ってくる足音を、息を殺して聞いていた。静かな放課後の学校に木霊するその音を、他の誰かと間違えるはずなどない。 開け放された教室の引き戸から背を離し、音だけで向こうがここを通り過ぎる時間を計算して、最高のタイミングで腕だけ廊下へ伸ばしてそのまま引きずり込んだ。 「っ……!」 相手が驚いて上げそうになった声を、唇で塞いで飲み込ませる。右腕は華奢で小柄な体を受け止め、左手は音を立てずに引き戸を閉めた。 それから、ようやく唇を離す。強引に連れ込まれた沖田は憮然として、土方の顔を見上げた。 「あんた、部活は」 「今日は休み」 「俺、急ぐんですけど」 「お前が急ごうとのんびりしようと世界は変わらず回ってる。安心しろ」 自分でも意味不明なことを口にして沖田をわざと混乱させ、その隙に手近な机に乗りあがった。その足の上に沖田を引き上げる。 回る世界について真剣に考え始めていたらしい沖田は土方の行動に我に返ったようで、顔を見なくても息を呑んだのがわかった。 「ちょっと待ってくだせェ土方さん。俺マジで急ぐんですけど」 「用事ならたった今終わったんじゃなかったのかよ」 言いながらも勝手に片手で沖田のネクタイをほどいて手首に絡ませ、開いた指でシャツのボタンを上から三つまで外した。 土方は沖田の用事がもう終わっていることを知っている。 周りに文句を漏らしていた補習のプリントの束を胸に抱いて、職員室へ走るのを見ていたから。ここで張っていたら案の定沖田は数分後にまたこの廊下を通りかかり、土方はそこを捕らえたのだ。もうプリントを持っていないことから再提出ということもありえない。 「ちが、そうじゃな、くてっ」 シャツの隙間から白い肌に手を滑り込ませる。胸の頂を軽く爪で引っかいてやると、言い訳めいた沖田の言葉が跳ね上がった。 反射的に逃げようとする体を両腕で抱きしめる。向こうはふんばろうにも足は地面の数センチ上を彷徨うばかりで、抱きしめられてしまえばもう逃げることはできない状況だった。 「逃がさねぇよ。いっそ猿ぐつわでもかましてやろうか」 「っのヤロー」 舌打ちして毒づくが、それが沖田の精一杯。かわいらしさに笑いがこみ上げてくる。 手首に絡めたままのネクタイを沖田の口許にあてがうと、本気だと思ったのか沖田は首を振って逃げようとした。くつくつと、喉元で笑う。猿ぐつわなんて、そんなもったいないこと誰がするものか。 抵抗を諦めたのか大人しくなった沖田にすっかり気をよくして、土方は沖田の腰のベルトに手をかけた。片手でベルトを外すのももうすっかり手馴れたもので、もう片方の手で腰を持ち上げて、膝頭までズボンを下着ごと脱がした。 「……あんたの部屋寄るから、そっちでしません?」 「別にここでいいだろ」 相手の譲歩案をすげなく却下。ここまで来てお預けを喰らうなんて真似はごめんだ。 そんな土方に沖田は溜息をつこうとしたのかもしれないが、土方が脱がした足の間に手を入れてきたのでそれは別の声に変わった。 体をこわばらせる沖田をあやすように、片手で優しく薄い茶色の髪を撫でる。その間にもう片方の手は愛撫を繰り返す。先走った甘い蜜が土方の指を濡らした。 いい加減に邪魔になってきたので足に引っかかっているズボンから片足を抜かせようと太腿に手を伸ばしかけたところで、その動きがぴたりと止まる。沖田も気づいたらしく一緒に息をひそめた。 耳を澄ませば沖田の名を呼び、廊下を歩いてやってくる山崎の声。 「……だから言ったのに」 「先に言えよ」 「言わせてくんなかったのはあんたでしょう」 空気に紛れてしまいそうな声で言い合いをして、それどころではないことを同時に悟った。 不幸にもここは教室の後ろ側だ。前に移動して教卓に隠れる余裕はない。誤魔化そうにも沖田がこのなりでは何をしていたのか一目瞭然でわかってしまう。 抱きしめる土方の服の袖を沖田が引っ張った。その目が示す先にあるものを見て、土方は沖田が何を考えているのか瞬時に理解する。 山崎はもうすぐそこまで来ている。土方は音を立てずに沖田を抱いたまま机から飛び降りて、速やかに行動に移った。 学校で人を探すとき、たいていの人間は間違いなくその人の所属する教室をのぞくものだ。不幸にもここは沖田の教室で、山崎はその例に漏れず「沖田さん、いますかぁ?」と言いながら引き戸を開けた。 「あれ、副部長なにしてるんですか」 「今帰るとこ。つーか俺はお前に副部長って呼ばれる筋合いねェよ」 土方は剣道部、山崎は新聞部。それなのになぜか山崎は土方を副部長と呼ぶ。三日だけ剣道部に在籍していたときの名残らしい。 山崎は何度も名前を呼んでいた彼の人物の姿を探して教室に視線を一巡させるが、見つけることができず首をかしげる。 「沖田さん見ませんでした? 一緒に帰るって行ったのになんか戻ってこないんですよ」 「いや、こっちには来てねぇぞ」 不自然に濡れた右手は背中に回し、隠し忘れて床に落ちている探し人のネーム刺繍入りネクタイを足で踏みつけ後ろに押しやる。自分はまだ脱いでいなくて良かったと、土方は心中で呟いた。 「おっかしいなぁ。荷物預かってるのに」 「あいつのことだから忘れてんだろ。お前ももう帰れや」 「うーん。そうしようかなぁ」 蹴り飛ばしてでもいいから一刻も早く追い出したい土方の思いが通じたのか山崎はまだ首を捻ったまま背を向ける。しかし土方が安堵の息をつく前にすぐ振り返った。 「あ、副部長も今から帰るんでしょう。途中まで一緒に帰りませんか」 「え」 予想外の言葉につい声が漏れてから、しまったと思ったがもう遅い。背中に感じる沖田の視線が突き刺さるように痛かった。山崎は疑念のこもった目で土方を見ている。 どう切り抜けよう。無意識に彷徨わせた視線の端を植木鉢が掠める。誰も水をやらないのですっかり萎れかけていた。 「俺、花に水やってから帰るから」 なんて苦しい言い訳。今まで一度だってそんなことしたことないのに。 絶対不審に思われるか、待ってますとか手伝いますとか言われるかと思ったが、「じゃあ俺急いで沖田さん追いかけてみます」と思ったよりあっさり騙されてくれた。山崎の頭の平和さに感謝だ。 沖田を追いかけ走っていく山崎の背中を見送り、教室の引き戸を閉める。鍵でもかけたいところだがついていないので仕方ない。 今度こそ安堵の息をつき、足蹴にしてしまったネクタイを拾い上げ、カーテンのほうへ向かった。 よく見られていたらおそらくばれただろう、不自然に膨れたカーテンの隙間を土方はめくり上げる。そこにはさっきと同じ格好でこちらを見上げる、少し不機嫌そうな沖田の顔があった。 「だから急いでるっつったのに」 「悪ぃ」 全然悪びれず形だけの謝罪を口にして、カーテンごと抱きしめて口付けする。機嫌を直してくれたのかはわからないが、沖田も特に嫌がらず舌を絡めて答えてきた。 「花に水をやるのは俺の部屋でにするか?」 「そんなものやったら花は枯れちまいますぜ」 「適材適所だろ。ほら、花が花だし?」 言いながら土方は手際よく沖田にシャツを着せなおしボタンをはめていく。まさか本当に土方の部屋までおあずけするとは思わなかったのか沖田は少し驚いて、それから嫌な顔をした。 「俺おあずけ?」 「そ。お持ち帰り。テイクアウト」 沖田の言いたいことをわかっていて、しれっと土方は言った。沖田はますます嫌な顔を色濃くする。 「たっちまったもんをどうしろと」 「花は手折るもんじゃなくて愛でるもんだ」 「ここまでしておいて何を今更」 からかいの笑みを返し、上履きに踏まれて汚くなったネクタイを首に巻くことで答えてやった。 嫌な顔が今度は苦い顔になった。困り果てたような、日頃は見せないわずかな懇願を滲ませた表情。 「手折っていいから放置はマジ勘弁。頼むから今ここでして」 今度は向こうから、誘うような愛玩するような口付けをする。男というのは本当に不便で、その気でなくてもそれなりのことをすれば反応してしまうのだから哀れだ。そしてそれを計算していた自分もやはり重症で、花が花なら水も水だということか。 土方はほしい言葉を引き出せたことに満足し、着せてばかりのシャツをもう一度脱がせる。片方の腕でズボンを片足から引き抜いて、開かせた。 ちらりと植木鉢の花のほうを思い出し、覚えていたら帰るときにあちらにはちゃんとした水をやろうと考えた。 しかし今はまず、何よりもこちらのかわいくない花が最優先。 ネクタイしてるから気づいた方多いと思いますがこいつらブレザーです。中高通してブレザーだったので学ランは構造がわかりませんでした。カーテン使いたかっただけなのにまさかエロを書く結果になるとは思いませんでした。 05/11/13 |