ラブポーション

<1>

2月14日。お菓子屋の陰謀に恋人たちが踊らされる魔性の日。
なんの前触れもなく差し出されたのは、全体をピンクの透けた布地でラッピングし蓋の部分を赤いリボンで止めた小さな小瓶。

「俺からのバレンタインプレゼントでさァ」

土方は耳を疑った。そういう関係とはいえまさかもらえるとは思っていなかったのだ。なぜならこの沖田が自分の金を他人のために使っているところなど未だかつて見たことがない。

「……マジでくれんの?」
「ええ。俺の気持ちです受け取ってくだせェ」

うれしかった。感動した。ちょっと泣きそうになった。
沖田の手から受け取って、柄にもなくドキドキしながら包みを開けた。栓を抜いて開けてみると甘ったるい匂いが鼻腔を刺激する。

「これなんだ、香水かなんかか?」
「いえ飲むんです。ささ、ぐいっと飲んでくだせェ」

沖田は土方の小瓶を持つ手にそっと自分の手を重ねて、土方の口に持って行かせようとした。しかし飲む前に一応何なのかくらい知っておきたいと思い、土方はその動きに逆らう。飲む、と聞いてなんだか嫌な予感が胸をよぎった。やたら甘い香りだが、ひょっとしたら毒の一種ということも沖田ならあり得なくはない。

「これ酒か? なんかすっげ甘い匂いするけど。まさか毒じゃないだろうな」
「酒でも毒でもありやせん。まあ飲んでも害とか後遺症とかないんでどうぞお気になさらず」
「いやちょっと飲むのに心の準備がいるような言動やめろって。これマジで何なんだよ」

こうまでして飲ませようとするのがやけに怪しい。予感ではなく絶対に何か裏があるような気がしてきた。そうだ考えてみれば沖田が本当に100%他人のために自分の金など使うだろうか。

「別にそんな構えなくても平気ですって。ただの催淫剤ですから」

訝しむ土方に、沖田はなんでもないという口調でさらっと言ってのけた。

「ってちょっと待てマジで!?」
「ほら正直に言ったんだから飲んでくだせェ」
「飲ませてどうする気なんだおいィィィ!」
「いやいつも俺ばっかりってぇのは不公平だと思うんでたまには俺が土方さんをいただこうかと」

沖田は口角を持ち上げてにやりと笑った。土方の手から小瓶を奪い取り、飲ませようと土方の口元へ持っていく。やはりこの小悪魔が100%他人のために己の金を使うはずなどなかったのだ。
飲まされてたまるか。土方はかなり本気でその手を押し返そうとした。

「こうなったらてめぇに飲ませてやるぜ」
「何言ってんですかィ。俺が買ったんだから俺の好きにする権利があるでしょうに」
「いやいや俺がもらったんだからその権利は俺のものだって」
「大丈夫ですってそんな怖がらなくても俺がんばりやすから」
「嫌だ、絶対俺は飲まねぇ!」

バレンタインの夜にいったい何をしているのか。馬鹿馬鹿しくなるまで二人はしばらく押しつけ合いを続けていた。
二人はまだ今宵この小瓶によってもたらされる災厄の存在を知らない。


<2>

「こっんどうさん♪」

今年も意中の相手からもらえたのは暴力だけで、鉄の味ばかりもらってしまった。そんな悲しみ(と痛み)に打ちひしがれて部屋でいじけていた近藤のところに、ご機嫌な沖田がやってきた。その後ろを土方も少し離れてついて来ている。

「おう、どうした総悟。それにトシも」
「愛しの近藤さんを慰めに来やした」

言って沖田は懐から小さな小瓶を取り出した。ピンク色のラッピングに赤いリボンがかかったかわいらしいもので、女性が好みそうな代物である。

「愛しい人に愛してもらえないそんなあなたへプレゼント。名づけて催淫剤です」
「って違ぇだろ」

真顔で説明する沖田の頭を土方がぴしゃりと叩く。痛ぇ、と口にしてから沖田は名残惜しそうに小瓶をしまいこみ、かわりに青色の四角い包みを取り出した。

「これ、俺と土方さんから本命です」
「え、これ義理じゃねぇの? マジこれ本命? 俺聞いてねぇんだけど」

にっこり笑顔の沖田と戸惑い顔の土方。差し出された包みにかけられた緑色のリボンに挟まっているカードには「こんどーさんへ おきたそーご&故ひじかたより」と汚いながらも一生懸命さがうかがえる字で書かれている。

「総悟、トシ、お前たちそんなに俺のことを……!」
「気づかなかったんですかィ近藤さん。俺はいつだって近藤さん激ラブですぜ」
「つーか今気づいたんだがなんで俺は故人になってんだ? おい答えろよ総悟」
「二人とも大好きだァァァ!」

二人の優しい気遣いに感動して、近藤は力いっぱい沖田と土方を抱きしめた。


<3>

現実逃避気味に沖田が土方の金で買っておいた近藤へのチョコを渡し、再び土方の部屋に戻って来た二人。向かい合って座る二人の間には例の小瓶が鎮座している。

「近藤さんにあげちゃえば丸く収まったのに」
「馬鹿言え。仮に近藤さんがあの女を薬で手に入れたとして、その後の惨事がお前想像できるか」
「土方さんが犯人ですって名乗り出ればその惨事は全て土方さんに向かいますぜ」
「そんなことで副長の座が手に入ると思うなよ俺はやらないからな絶対」

二人とも黙り込み、小瓶を見下ろす。結局これはどうすればいいのか。
捨てればいいということには思い至らないのは、どちらもこれをお互いに使う機会を虎視眈々と狙っていたからかもしれない。

「ここはやっぱあれだ。初めに決めたとおり土方さんが飲めばいいかと」
「いや俺がもらったんだから俺がお前に飲ましてやるのが筋じゃねぇの」
「いやいやここは俺が」
「いやいやいややっぱ俺が」

言いながら、そろりと沖田の手が小瓶へと動いた。土方が会話に夢中になっている隙に奪い取ろうというのだ。しかし指先が小瓶に触れる刹那、土方のほうも動いた。長年の付き合いなのだ、沖田の行動が読めないはずがない。

「あっ」

奪おうとしていた沖田の手を片膝で踏んで押さえつける。そして余裕の表情で横から小瓶を掻っ攫った。

「へっ、俺に勝とうなんざ10年早いんだよ」
「土方さんずりぃっ」

土方は沖田の手を膝で踏みつけたまま、頭を打ち付けてしまわないよう後ろに手を添えてやって、ゆっくりと体重をかけて畳に押し倒した。組み敷いて動けないようにして、口で小瓶の栓を抜く。栓はそのまま畳に吐き捨てられ、ころころと隅に転がっていった。

「はーい総悟君。お口あーんしましょうねぇ?」
「んー! んー!」

気味の悪いくらい楽しそうな笑みを浮かべる土方に、沖田は頑として口を閉じ首を振って抵抗する。
しかし土方は器用にも小瓶を中指と薬指の間に挟み、人差し指で沖田の唇の先を何度もなぞるようにして口の中に指を差し入れていく。沖田が噛み付こうとする前に親指と人差し指で歯を抑えた。

沖田はそれでもまだ暴れて抵抗を試みていたが、この体制で沖田が土方に勝てる可能性はゼロに等しかった。たぶん罵詈雑言を叫びたかったのだろうが、土方が口を開けたまま固定しているせいで何も言うことはできず、唇の隙間から雫が頬を伝って落ちるだけだった。

沖田の嫌がる様を十分に堪能してから土方は歯に挟むような形で小瓶の口をあてがい、ゆっくりと傾ける。中の液体はおもしろいほど緩やかに、しかし確実に沖田の口内に運ばれた。少し噎せそうな素振りを見せたので慌てて空になった小瓶をほうり捨て、飲み込みやすいよう頭を動かしてやる。

吐き出さないよう手で沖田の口を覆い、土方はそのままじっとしていた。
沖田はもう抵抗するのをあきらめたのか大人しくなっていて、程なくして喉が小さくこくんと鳴った。

自分で入手してきたくせにこんな得体の知れないものを飲まされたのがよほど屈辱だったのか、沖田の目にじわりと涙が浮かんだ。


<4>

「俺の勝ちだな」

勝利を確信し、土方は沖田の上から体をどかす。拘束を解かれた沖田はがばっと勢いつけて起き上がった。袴の袖でごしごしと濡れた瞳と口元を拭う仕草がかわいらしくてそそられる。

さて、催淫剤とはいったいどれほどで効くのだろう。
完璧に悪戯を阻止されて手酷い仕返しを食らった沖田が初めは何を口にするかと心を躍らせる土方だが、沖田はここで予想外の行動に出た。

何も言わずに土方の胸倉を引き寄せて、濡れた薄紅の唇を土方のそれに重ねてきたのである。こんな荒々しいキスを沖田からされるのは初めてだった。
初めは薬の効果かと思ったが、土方はすぐ異変に気づいた。移された。沖田の口内であたためられた液体が土方の中に入ってきたのを確かに感じる。

慌てて吐き出そうとしたけれどすっかり油断していたせいで沖田に掴まれた両手は振りほどくことができない。重ねあったままの唇も解放してもらえず、そのまま揉み合っているうちに勢いでとうとう飲み下してしまった。

ゼロ距離で沖田の眼が笑ったと思った次の瞬間には、沖田は土方から離れていった。

「これで引き分けですねィ」
「てめぇ、さっき全部飲んでなかったのかよ器用な真似しやがって」
「そうですねェ」

意味の取りづらい微妙なうわ返事。目を逸らして、顔逸らして、体もそっぽを向いて。

どうした、と聞く必要はまるでなかった。
土方もだんだん体が火照ってきて、沖田の背中を見ていたらだんだん変な気持ちが込み上げてくる。これは危ないと思って土方も反対側の壁を見ることにした。
ものすごい触りたい衝動に駆られた。しかし触ったら最後、どうしようもないくらいメチャクチャな抱き方をしてしまいそうな気がする。

「やばい。俺やばい土方さんどうしよう」
「おいこれ一人分じゃねぇのか、変だろこの効き具合」
「実は致死量でさァ。一人で全部飲んだら文字通り精も根も尽き果てるそうで」

自分の彼氏に何する気だったんだこいつ。
催淫剤過剰摂取で不能になるなんて話は聞いたことがないが、もし万が一そんな成分が含まれていたらと思うとちょっと、いやかなり怖い。

しかし今はそれどころではなかった。

「やばいって。話してるだけでなんかいろいろやばいって。どうすんだよ考えてみたら今日これから俺ら会議入ってんじゃん」

やばいやばいと二人で言っているうちにも時間は刻々と過ぎていく。会議まであと40分。


<5>

「そうだ酒だ。毒には毒をもって立ち向かうんだ」

5分の沈黙を経て、唐突に土方は思いついた。酒を飲んでこの変な感覚を打ち消してしまおうという算段である。

「酒ならたしか俺の部屋の押入れに」
「よし取って来い」
「へい」

沖田がこんなに素直に土方の命令に従うことなどたぶん初めてだろう。しかし両者ともそんなことを意識している余裕はなかった。

そうして沖田が持ってきた酒を、相変わらず背中合わせのまま無言でぐびぐびと飲み下す二人。
うまいまずいなんて考える頭は既にない。ただひたすらにとにかく酔ってしまおうという一心だった。

そして二人で瓶3本消化する頃には狙い通り完全に酔いが回っていた。

「やべぇ……なんかよけい理性保てねぇっつーか」
「明らかにさっきより悪化したような」

毒をもって毒を制すつもりが、相殺どころか相乗効果を与えてしまったらしい。二人とも飲む前よりますますやばいことになってきた。

「……おい会議まであと10分だぞ」
「……いやもう無理」

座っているのも辛くなって、双方共に壁を見たまま床をごろごろ転がりだした。あと10分。この衝動を打ち消すにはどう考えても短すぎる。10分でイけなくもないがぎりぎりまでここにいると誰かが呼びにくる可能性がある。なので実質的にもう残り時間はゼロに等しかった。

絶体絶命か。そう思った折、更に事態はよくない方向へ転落した。


<6>

「副長、そろそろ会議始まるから近藤さんに呼んで来るようにって言われたんですけど。それと沖田隊長もご一緒ですか?」

障子の向こうから聞こえるのは山崎の声だ。
何か答えなくてはいけない。しかしまともに話せる頭と体を今は持ち合わせていない。沖田のほうも同じらしく、二人して「あー」だとか「うー」だとかよくわからない呻きでもって応答した。下手に何か喋ろうとすると一緒に変な声が出そうになる。

「副長? 入りますよ?」

しばらく待ってもまともな返事が返ってこないことを不審に思ってか、山崎が障子を少しだけ開けるのが気配でわかった。
もちろん二人ともそちらを見ない。今誰かと目を合わせたら間違いなく自分を抑えきれないからだ。
土方が壁と睨めっこしていると、そろそろと少しだけ開けられた障子が勢いよく開け放たれた。

「うわっ、何してるんですか二人とも!」

そんな声と共に入ってくる山崎。しかしすぐ後に悲鳴が続き、おそらく酒瓶でも踏んだのだろう、ずでっと山崎が引っくり返ったらしき派手な音がした。

なんて馬鹿だったろう。その音に気を引かれ、反射的につい振り向いてしまったなんて。

「山崎」
「大丈夫かィ」

数十分ぶりに沖田と目が合う。酒と薬の効力で上気したほんのり桜色の頬、袴の袷から覗く胸元。一瞬理性が吹っ飛んで飛び掛りそうになる自分を力の限り自制し、どうにか視線を逸らそうと顔を下に俯けた。沖田も似たようなものだったのだろう。土方より速い動作で俯くのが気配でわかった。

そしてそこには仰向けにひっくり返った山崎が倒れていた。どこか強く打ち付けたらしく珍しく目が少し潤んでいる。

「もう、二人ともなんで会議前に酒盛りなんか……」

起き上がりかけた山崎にじりじりとにじり寄る、二人の心は一つだった。

沖田が後ろから山崎の両肩をがしっと掴む。
土方はきょとんとする山崎を逃がさないよう馬乗りになって足を押さえた。

「ごめん山崎。俺、今までお前がこんなかわいかったことに気づいてやれなかったぜ」
「いつも殴ってばかりだった侘び、今ここで全部払ってやるからな」

二人とも自分が何を口走っているのかよくわかっていない。ただもう今の頭の中は山崎のことで一杯だった。真選組副長と一番隊隊長の自制心も、もう限界だった。

「え? あの、二人とも? なんで目ぇ据わって……ひょっとしてマジですか!?」

遅ればせながら自分の身にこれから起ころうとしていることを悟り、山崎の顔からサーっと血の気が引いた。土方と沖田は酒と催淫剤で完全におかしくなった頭をおかしいと認識する思考力すら失せていたため、真面目な顔で「大マジです」と声をそろえて答えた。

「総悟、お前ちょっとそのまま押さえてろ」
「ずっり土方さん先かよ。じゃあいいよ俺なんかちゅーしちゃうからディープなの」

山崎の足を持ち上げる土方、小さな両手で頬をそっと包み込む沖田。

「やっ、ちょっと二人ともマジで勘弁してくださいって! 誰か、ちょっと誰かァァァァァァ!」

会議を前にした夜更けの屯所に、山崎の悲鳴が響き渡った。

しかし騒ぎを聞きつけた他の隊士たちがやって来たころには土方の寝所にはしくしくと涙を流す山崎がいるのみで、肝心の部屋主の姿はどこにもなかった。もちろん今夜の会議は幹部二人が失踪したためやむをえず中止である。


<7>

まだ年が始まって二月と半分しかたっていないが、たとえ今日が昨年の大晦日だったとしても今年最悪の目覚めに分類していただろう。
目が覚めてまず土方はそう思った。

頭が痛い。あとなんかいろいろ心とかそのへんが痛い。いくら切羽詰まっていたとはいえ、どうして山崎なんかに欲情しまったのかと自己嫌悪する。
いっそ全て忘れていればよかったのにこういうときに限って昨日のことははっきりと覚えている。

昨日はあれから山崎の悲鳴を聞きつけて他の隊士がやって来て、喜ばしいことに山崎集団強姦事件は未遂で終わった。それから山崎がどうしたかは知らないが、土方はとりあえず最後の理性振り絞って沖田を抱えて逃亡した。

現在は逃亡した先のホテルの一室である。従業員にはとある要人から密命を受けて張り込み捜査を行うので誰であろうと他言無用と言って金を掴ませてあるので、監察が探しに来てもたぶん誤魔化せるだろう。我ながら下らないことで職権乱用してしまった。

「うぁ。さいてーの目覚めでさァ」

昨夜のことを思い出して落ち込んだり隣の馬鹿に腹が立ったりうっかり間違ってまた欲情しかけたりして備え付けの灰皿を煙草で埋めてだらだら時間を潰していたら、一時間くらいしてようやく沖田も目を覚ました。

「起きたか」
「へい」

それから今くわえている一本が吸い終わるまで二人とも沈黙した。たぶん沖田も昨日のことを思い出しているのだろう。窺い見たその顔はあまり楽しそうではない。

「山崎どうしましたかねェ」
「大丈夫だろ。この手の被害は基本的に本人がすぐ口にすることはねぇ。今のうちに手を打っときゃ表沙汰になることはねぇだろうさ」
「そういう問題じゃねぇでしょう。つーかなんであんたそんな詳しいんですかィ。まさか前にも似たようなことが?」
「あってたまるかアホ」

女は合意の上で買うものであって無理やり犯すものではない。もしあえて言うならば例外は隣の口減らずくらいである。

「さて帰るか。近藤さんも心配してることだろうし」

とりあえず帰って昨日の会議をフけた弁解をしなくてはならない。この一時間の間にどうにか言い逃れできそうな言い訳も考えておいた。あとはその足で山崎のところへ行って謝罪と口止めをすれば万事問題なしだ。

土方は立ち上がり、脱ぎ散らかしてしわしわになった着流しに袖を通した。沖田も倣ってベッドから降りようとして、しかし突然派手に床に崩れ落ちる。
ぺしゃんと変な格好で空気の抜けた風船のように床に落ちている沖田。その顔は唖然としていて、見下ろす土方もたぶん同じような顔をしていたと思う。

それから沖田はもう一度立とうと試みて、再度転びかけたところを慌てて土方が抱きとめた。

「あー……昨日ちょっとヤりすぎかなとは途中から思ってたんだ」

ちょっと罰が悪くなって後ろ頭をかいて誤魔化してみたり。
しかしもちろんこれで許されるわけもなく、自分の足で立てないから土方に全体重預けた格好でぼかすかと殴ってきた。応戦しようにも沖田を抱えているのでどうすることもできない。

「ばか! 土方さんのヤリマン! どうやって帰ればいいんだよコノヤロー!」
「うっせ喚くなクソガキ! そもそもお前が得体の知れないもん持ってくるからいけねぇんだろ!」
「そのクソガキに欲情してるのはどこの誰か忘れたんですかィ! 大体あんたゴム付け忘れたでしょうすっげー腹気持ち悪ぃし!」
「はっ、忘れたのかよお前が付けんの待てないからとっとと挿れろっつったんだろうが!」

ぴたりと攻撃が止まる。きょとんとして、それから突然かーっと顔を赤く染めた。思い出したらしい。沖田のことだから完璧に忘れていたのだろう。

連鎖反応で昨夜のことをいろいろ思い出してしまったのか沖田は顔を真っ赤にしたまま黙り込んでしまって、一緒に恥ずかしくなってきた土方も少し赤くなって、とりあえずいつまでもこうしていると再び理性が飛びそうなのでベッドに座らせてやった。沖田の一糸纏わぬ全て露出された白い肌のあちこちには、昨日散々付けた痕がありありと残っている。

「まあ、あれだ。帰るのは駕籠でも拾うか。とりあえず着替えさせてやっから腕あげろや」
「シャワー浴びたい。あとマッサージも」
「わかったよシャワー室連行な」
「エッチなことしないでくだせェよ?」
「しねーよ流石にヤり疲れた」

本当はそうでもないのだが、これ以上ヤったら流石に沖田が具合悪くしそうなのでどうにか我慢しようと思う。
開き直っていろいろ我侭言ってくる沖田に呆れの溜息をつきつつ抱き上げてやると、沖田も素直に従って首の後ろに腕を回してきた。

とりあえずシャワー浴びさせてマッサージしてやってルームサービスで軽く食事とって、それから駕籠を拾って屯所に帰ろう。
山崎には謝罪もこめてミントンのシャトルでも買ってやれば許されるだろうか。いや許されないかもしれない。
そうだ、それとあの薬の入っていた瓶もきちんと処分しておこう。自室の引き出しの奥にでも。




このあと山崎は二人と当分口聞いてくれませんでしたよ。もちろん他の隊士たちにも何があったかは口を閉ざし続けました。山崎って実は沖田に次ぐ屯所のアイドルだと思う。

06/05/14