拍手小ネタ11〜15 11.蜂蜜モーニング(土沖) 起き抜けに煙草を一本くわえてシャツに腕を通した。スカーフも巻いたところで煙草を左手に持ってベストを被り、右手を通し、それから右手に渡して左手を通した。慣れたもので焦げ跡一つつけるようなへまはしない。 いつもの隊服に身を包み出勤準備完了。しかしまだ時間に余裕もあるので吸い終わるまでここにいようと、土方は昨晩脱ぎ散らかしたままになっている二人分の衣服を適当に片付けたりして時間を潰した。 「ん……朝ですかィ」 吸い終わった煙草を灰皿に潰したところで布団がもぞもぞと動いた。頭までもぐっていたのを軽く手で隙間を作り、眠そうな目が外を覗いた。 「ああ。お前は今日休みだし寝てていいぞ」 「言われずともがな」 寝言のようにぼんやりした舌足らずの声がそれでも一応返事を返してきた。砂浜の貝のようにまた潜ってしまうかと思いきや右手の指がそろりと布団の外に出てきた。 「ちょっと来なせェ」 ちょこちょこと手が動き、招き寄せる。なんだよと言いながら土方は浮かせかけた腰を下ろしてそちらに近づいた。 「もっと」 「って俺仕事あるんだけど」 それでも沖田の手は動きを止めず、仕方がないので隙間から布団の中を覗き込めそうなくらい顔を近づけた。 白い右手が肘まで布団から出てきて土方の整えてばかりの上着の襟を捕まえて引き寄せた。起き抜けで力の加減をし忘れているらしくかなりの力で引っ張られ、上着が悲鳴を上げるのを聞いた気がした。 体勢を崩しかけて土方は両手を畳の上についてもちなおす。 頭だけ布団の中に招き入れられて、薄暗い布でできた貝殻の中で唇に暖かいものが触れる。 それはすぐに離れて、そのかわり甘い極上の笑みを浮かべた顔がすぐそばから覗いていた。 「いってらっしゃい」 それだけ言ってすとんと眠りに落ちてしまう。土方はしばらく驚いて固まっていたが、思い出して乱れた布団をかけなおしてやった。頭まですっぽり。これは沖田の寝るときの癖で、またこれにより誰か入ってきても土方が連れ込んだ女がいると思って慌てて出て行くのでそれなりに役に立ってもいる。 「いってきます」 起こさないよう小さな小さな声で呟き、土方は立ち上がった。 副長室へ足を向けながらずっと考えていた。 今回は沖田が悪い。昼の休憩時に一度戻ってもまだ沖田が寝ていたらそういうことで勘弁してもらおう。二日連続は疲れるから嫌だと言おうが、その気にさせたのは向こうなのだ。 12.食い放題の店(土沖) 元気よく入って来た沖田は両手で大皿を持っていた。 「どーもおにぎり屋さんでっす。こっちがウサギでこっちがクマ、んでこれがゴリラ」 おにぎりアートとでもいうのだろうか。沖田は海苔やら鮭やらで顔を作り、器用に動物の形を握った動物おにぎりを見せに来た。 「って食べ物粗末にすんなや」 「しませんってちゃんと食べやす。土方さんのためにも一つ作ったんですぜ」 皿一杯にならべられた中から沖田は一番目立っていたやつを摘み上げた。米の白さを全て埋め尽くすような鮭、真ん中にはなぜか爪楊枝が刺さっている。 「死に面した土方さんおにぎりでさァ」 「ブラックジョークにもほどがあるなオイ」 なぜ動物に混じってこんなものが。 いろいろ言いたいことはあったが、とりあえずくれるらしいのでありがたくいただくことにしよう。モチーフはともかく腹が減っていたのでちょうどいい。 「うまいですかィ」 「まあそれなりに」 こんな塩ふって握るだけの代物にうまいまずいがあってたまるかと思う。しかしせっかく機嫌がいいのをわざわざ損ねる必要もあるまいと適当な返事を返してやった。 「じゃあおにぎり屋さんは次は近藤さんにゴリラおにぎり配ってくるんで失礼しやす」 「待てよ」 土方は皿を持ち上げようとした沖田の腕を掴んで引き止めた。 「店員さん、俺もうひとつほしいんだけど」 誘うような口ぶりで言って、捕まえた手に口付けを落とす。それだけで沖田は土方の言わんとしていることを察して嫌そうに顔をしかめた。 「店員売ってるおにぎり屋さんがどこの世界に……んっ」 手を引っ張り抱き寄せて、文句を言う唇を塞いだ。鮭の味だった口の中に沖田の味が広がって、深く味わうように舌で口内をかき回した。沖田の喉から抑えきれずに甘い吐息が漏れる。 「ここおにぎり屋さんじゃなくて食べ放題の店だから」 唇を解放して答えてやったら沖田はさらに顔をしかめようとした。しかし唇が濡れているのに気づき、すぐに指先で拭って舐める。本人は意図したつもりはないのだろうが、ちゅ、とかわいい音が鳴った。 「おにぎりどうするんですかィ」 「終わったら腹減るだろうしちょうどいいだろ」 手を取って、まだ水気の残っている指を自分の口に含んだ。 「そんなつもりで作ったんじゃないっつーの」 それでも逃げる素振りは見せず、そのかわりせめてもの抵抗なのか沖田は土方の口の中で指を動かし舌を引っかいて遊びだした。 13.ひどい男(山+土沖) 沖田隊長がさっきからいろいろ話しかけているのに副長はどうでもよさそうで、投げやりな返事を返しながら熱心に新聞に目を通していた。真選組の副長として世界情勢に気を配るのはたぶんいいことなのだろうが、こういう態度は少々いただけないのではないか。そう思ってしまうのはやっぱり俺が沖田隊長贔屓だからだろうか。 「ちょっと聞いてるんですかィ土方さん!」 「いや全然。おいどけって新聞読めねェ」 大した話題でもないだろうに沖田隊長はなんとしてでも自分に注意を向けたいようで、無理やり副長と新聞の間に割って入った。胡坐をかいていた副長の上に乗って、新聞が沖田隊長の足の辺りでぐしゃりと潰れた音をたてる。 「ちゃんと俺の話聞いてくだせェ」 子供のように唇を尖らせて、沖田隊長は副長の顔を至近距離で覗きこんだ。 顔がやたら近くなって見ているこっちが恥ずかしくなる。それでも二人はその距離に何も疑問を持っていないようで。 それどころか副長は、あろうことか謝罪もなしに何の脈絡もなく沖田隊長の唇に吸いついた。こういうのも通り魔的犯行に分類していいかもしれない、とかちょっと一瞬思考が現実逃避した。 「んっ……」 37秒。長くはないが短くもない。ご丁寧にも数えてしまった自分が無性に可哀想になる。 ようやく唇を解放され、突然の無呼吸状態に息を喘がせながら沖田隊長は少し赤みを帯びた顔で副長に非難の眼差しを注いだ。 「なっ、なんなんですかィ突然!」 「いや顔近づけてきたからしてほしいのかと」 「んなわけあるかィこの色魔! 大体あんた、顔近づけてきたら誰にでもそうするのかよ!」 「いやいい女限定。山崎とかだったら張り倒す」 「あーもうサイテーこのエロふくちょー! 近藤さんにチクってやる!」 まるで少しも悪びれずに言う副長に沖田隊長は顔をますます赤くして怒り出し立ち上がり様、副長の顎に渾身の一撃食らわせて走って出て行ってしまった。まさか本気でセクハラ被害の訴えを出しに行ったのだろうか。そうしたら次は沖田隊長が副長か。あ、これけっこういいかもしれない。 副長は顎にモロに食らって床に転がっていたがそれほどダメージはなかったのか、思っていたより早く起き上がった。 畳に転がっているぐしゃぐしゃの新聞を拾い上げ、仏頂面で手で伸ばして再生を試みている。 しかしふと気がついたように顔をこちらに向けて、本当に心の底から不思議そうな顔をして尋ねてきた。 「おい山崎、俺は今いったいなんで殴られたんだ?」 「はぁ? わからないで俺に質問する辺りじゃないですかね!」 「ってなんでお前まで怒ってるんだあの日かコラ」 「違ぇよお前もうとっとと切腹して生まれ変わって来いよ!」 山崎退、上司の仕事ぶりは尊敬できても人間面は全く尊敬できません。むしろ軽蔑していると思います。 14.ひどい男2(山+土沖) 沖田隊長がさっきからいろいろ話しかけているのに副長はどうでもよさそうで、投げやりな返事を返しながら熱心に新聞に目を通していた。真選組の副長として世界情勢に気を配るのはたぶんいいことなのだろうが、こういう態度は少々いただけないのではないか。そう思ってしまうのはやっぱり俺が沖田隊長贔屓だからだろうか。 「ちょっと聞いてるんですかィ土方さん!」 「いや全然。おいどけって新聞読めねェ」 大した話題でもないだろうに沖田隊長はなんとしてでも自分に注意を向けたいようで、無理やり副長と新聞の間に割って入った。胡坐をかいていた副長の上に乗って、新聞が沖田隊長の足の辺りでぐしゃりと潰れた音をたてる。 「ちゃんと俺の話聞いてくだせェ」 子供のように唇を尖らせて、沖田隊長は副長の顔を至近距離で覗きこんだ。 顔がやたら近くなって見ているこっちが恥ずかしくなる。それでも二人はその距離に何も疑問を持っていないようで。 それどころか副長は、あろうことか謝罪もなしに何の脈絡もなく沖田隊長の唇に吸いついた。こういうのも通り魔的犯行に分類していいかもしれない、とかちょっと一瞬思考が現実逃避した。 「んっ……」 37秒。長くはないが短くもない。ご丁寧にも数えてしまった自分が無性に可哀想になる。 ようやく唇を解放され、突然の無呼吸状態に息を喘がせながら沖田隊長は少し赤みを帯びた顔で副長に非難の眼差しを注いだ。 「なっ、なんなんですかィ突然!」 「いや顔近づけてきたからしてほしいのかと」 「んなわけあるかィこの色魔!」 「じゃあしてほしくねぇの?」 副長がまるで少しも悪びれずに言って沖田隊長の顔を覗きこむと、沖田隊長はますます顔を赤くした。副長の視線から逃れるように俯いて、しばらくしてから小声で答える。 「……嫌じゃねぇでさ」 「じゃあいいじゃん。オラもう一回すっから口開けろ」 副長は慣れた手つきで沖田隊長の顎を上向けさせて、沖田隊長も素直に従って口を開けた。そしてもう一度同じことの繰り返し。今度は余裕で一分超。 「畜生エロ副長めとっとと切腹して生まれ変わっちまえこのヤロー!」 「って山崎お前結局どっちに転ぼうが気に食わねぇんじゃねぇかァァァ!」 男泣きで走って出て行く俺の背中を、おそらく沖田隊長を抱きかかえたままであろう副長の声が追いかけてきた。 山崎退、上司の仕事ぶりは尊敬できても人間としては嫉妬心で暗殺したくてたまりません。 15.搾りたて牛乳(土沖) 「ひっでぇ何もぶつことねーじゃないかィ。たかがパトカー一台潰したくらいで!」 「パトカー一台潰されて怒らねぇでいつ怒ればいいんだこのアホ!」 後頭部を両手で押さえ痛みに涙を滲ませて反論する沖田だが、所詮は子供の言い訳に過ぎない。これでしていることが子供の悪戯レベルなら微笑ましい限りなのだが。 「大体あんたはいつも怒ってばっかでカルシウム足りないんじゃねぇの」 「ほーう。じゃあカルシウムたっぷりとらせてもらおうじゃねぇか」 土方は突然沖田の肩を掴んで足払いをかけた。体重を支えるものがなくなって、がくんとよろけて全体重が土方の腕によって受け止められる。 「へ、ちょっ、カルシウムって?」 ぎょっとして一瞬のうちに顔面蒼白になる沖田に土方は口角を持ち上げて笑いかけた。 「知ってるか? 牛乳は搾りたてがうまいんだぜ総悟君」 「いやちょっとそれたぶん牛乳じゃないって! 絞るとこ全然違うし牛じゃねぇし!」 「あーいいのいいの。聞き分けのない子にはお仕置きが必要だから」 じたばたともがいてなんとか逃げ出そうとする沖田だが、羽交い絞めにされてしまっては最早逃げ出す術はなかった。 「うわ離せこの変態! やっ、ベルト外すなってコラ! くすぐったいって、ちょっと、やだ……!」 それでも徐々に抵抗は弱まっていき、次第に言葉少なになってくたっとされるがままになる沖田の姿に、土方は満足げな笑みを浮かべた。 「もう、あとでおいしいもん奢ってくだせぇよ」 「わーったよお前もちったぁ反省しろや」 観念した沖田のほうに顔を上げ、土方は啄むようなキスをした。 なんかこう読み返してみるとエロい話が集中しているようなのは気のせいだろうか。 「ひどい男」は前半は全く同じでオチだけ違いますよ。これは結構楽しく書いた記憶があります。 06/08/12 |