拍手ログ31〜35 31.ごめんなさい(土沖) 長引いた仕事が終わって私室に戻ってみると、勝手に敷いたらしい布団に丸くなって眠る姿が一つ。 それを見てようやく土方は自分のしでかして過ちを自覚した。 「ん……土方さん?」 土方の気配に気づいたのか、沖田はもぞりと体を動かし目を擦りながらこちらを見た。その様子はひどく眠そうで、土方は起き上がろうとした肩に軽く触れてそのままでいさせてやる。 「寝てろ。疲れてんだろ」 「でもあんた、したくて俺を呼んだんだろィ」 目をしばたたかせ不思議そうに問う沖田。しかし「疲れてねぇの」と尋ねれば「うん、ぐったり」と素直な返事が返ってくる。 沖田がそう答えるのも無理もない。最近はお互い仕事がたてこんでいて本当に忙しかったのだ。落ち着いて会う暇も休む暇もないくらいに。 だから仕事が一段落するや、会いたくて仕方なくて早速沖田を呼び出した。自分の感情ばかり優先して沖田の調子など考えもせずに。土方の部屋でうたた寝をする沖田を見て、初めて自分の思慮の浅さにひどい自己嫌悪を覚えた。 「ごめんな」 「なんで。つーか何が」 寝起きで頭が働いていないのか、本当にわかっていない様子で聞き返してきた唇をそっと塞ぐ。いたわるような手つきで抱きしめたら「気持ち悪ィ」と沖田はくすくす笑った。こうやって触れ合うのも、沖田の笑い顔を見るのもずいぶんと久しぶりで、それだけでなんだかホッとする。 「今日は俺も疲れたから、何もしない」 「そいつはお疲れ様でさァ」 今度は沖田のほうからキスをして、甘えるように体を摺り寄せてきた。土方が少し力を込めて抱き締めてやると、安心したのかとろんと瞼が重たそうに落ちてくる。 「俺、ここで寝てもいいですかィ?」 「ああ。てか、ここにいろ」 「へい……」 頷く声は頼りなくて、思った通り程なくして寝息に変わってしまう。おそらくよほど疲れていたのだろう。それでも来てくれたというだけで土方は十分だった。 「おやすみ」 小さな声で呟くと、頷くかのように沖田の頭が小さく動く。夢の中で聞こえているのかもしれない。 そんなことを考えながら沖田の鼓動を聞いているうちに、土方の瞼も重くなっていった。 そしてやがて、二人揃って甘い眠りへと落ちていく。お互いの鼓動を子守唄に聞きながら。 32.本当にあった怖い話(土沖) 夏の暑い夜とはいえ、時々はシャワーでなくぬるま湯につかるのも悪くない。 そう思い、久しぶりに山崎に湯をはらせて土方はしみじみと満足感に満たされていた。シャワーばかりで最近まるで使われていなかっ浴槽もさぞかし喜んでいることだろう。 「総悟、お前も早く来いよ。気持ちいいぞ」 「はいはい。まだ頭洗ってるんで一人で楽しんでてくだせェオッサン」 「誰がオッサンだ誰が」 茶色い紙をあわ立たせるのに一生懸命な沖田の背中を眺め、苦笑まじりの声で返した。鏡越しに上目遣いでそんな土方を見て沖田も「ご機嫌ですねィ」と笑う。 目があった瞬間ざわりと体がざわめくのを感じて、土方は浴槽の縁に頬杖をつくのをやめてくるりと体の向きを変えた。いくらなんでも真夏の風呂場でそんなことをするわけにはいかない。今日のような熱帯夜に風呂場でコトを行おうものなら二人そろってのぼせあがってしまうだろう。真選組の幹部二人が湯あたりで二人仲良く倒れたなんて話が隊士たちの間で囁かれるのはさすがにたまらない。 「ふうー」 気持ちを落ち着ける意味もかねて大きく息を吐き出した。こう温かい湯の中につかっていると、体の中の汚いものまで水蒸気に分解されて吐き出されていくような気分だ。ちゃぷちゃぷと音をたてて揺れる水面も書類の文字と睨めっこばかりしていた目を癒してくれる。 と、そこで土方は小さく首をか傾げた。水中に何かが浮いているように見えたのだ。 なんだろう、と思って手で掬いあげようとするが水といっしょにくるくると回転しながら逃げてしまう。どうせ髪か何かだろうとは思うのだが、それにしてはやけに小さいのが気になった。 「総悟、ちょっと桶投げろ」 「どうかしたんですかぃ?」 「いや、なんかゴミが浮いてるらしくて」 「へい。じゃ、投げますぜ」 最後の「ぜ」のあたりで力いっぱい投げられた桶は明らかに顔面狙いで、野球のキャッチャーのように顔の前で両手を構えているとバシッと小気味よい音をたてて桶は手元にやってきた。ちょっと痛い。 とにかく桶が手に入ったので今度はこれで掬ってみる。ゴミはまだそのへんに浮いていて、すぐに掬い上げることができた。 そして結局なんだったのかと桶の中に目を凝らしてみれば、 「……」 静止した水の中を、そいつはたしかに泳いでいた。 「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」 副長らしからぬ悲鳴を上げ、持ちうる力を振り絞って全速力で湯船から離脱する。もちろん桶はひっくり返さないように脇に置いて。 「土方さん? お化けでも見ましたかィ?」 髪を泡だらけにした沖田がびっくりした顔でこちらを振り返る。まさか突然叫びだすとは思いもよらなかったのだろう。 「総悟、これ見ろ、なんか泳いでる! なんか泳いでるゥゥゥ!」 「あー、きっとカッパでしょう。旦那が知り合いにカッパがいるとか何とか言ってましたぜ」 「カッパ型天人のほうがまだいいわ!」 「はぁ、そーですか」 顔面蒼白の土方に首を傾げ、どれどれと沖田も見に来る。そして桶を覗き込んで一言。 「ほんとだ、なんかいますねィ」 感想はそれだけのようだった。 そしてあっさいり桶から目を離すと、今度はしゃがみこんで湯船の中を覗き込む。 「あ、まだいますぜ。よく見るとあちこちにうじゃうじゃ。メダカの学校みてぇ」 「アホ言ってる場合かあぁぁぁぁ! これそんなかわいいもんじゃねぇよ!」 どうみてもメダカなどではない。なんというか、何かの幼虫のような。細長い体の先端に丸い頭のような物体がついたシンプルな生き物だ。どうみても魚の類などではない。 興味深そうに眺めつつも全く水に触れようとせず、さりげなく土方から距離をとって沖田は言った。 「ところで土方さん。俺やっぱ今夜は一人で寝ることにするんで夜這いかけてこないでくだせェ。じゃ、お先ー」 「え、ちょっ、総悟君? ノーリアクションで行くのかよ、俺を見捨てるのかオイィィィィ!」 しかし沖田は振り返らず、頭の泡をざばっとシャワーで流すとすたすた風呂場を出て行ってしまった。 後に残された土方はといえば、沖田を追うことも体を流すことも忘れ、全身にふつふつ湧き上がる鳥肌を感じながら身の毛もよだつ恐怖体験を胸のうちで噛み締めていた。 その年の夏、土方がたまには湯を張ろう口にすることは二度となかったという。 33.バニラ味のおもいで(土+銀 沖田病死後) 一人でする見廻りにももうずいぶん慣れた。でもまだ自分の斜め後ろを別の誰かに歩かせることはできないけれど。 歩いていてふと思いだし煙草の自販機の前で足を止める。財布から小銭を取り出しいつものように投入した。チャリンと音がしてランプに明かりが灯る。 そして味気のない光をつまらなそうに目に映し、いつもと同じボタンを押そうと手を伸ばした。 隣からすっと伸びてきた手。 適当なボタンを勝手に押して、ざまーみろと、してやったりと笑う姿。 背後から無作法にのば伸ばされた手は、土方の中のそんな記憶を呼び起こさせた。 それは奇妙な、まるで夢を見ているような。あるいは優しい現実に引き戻されたような。 「総――」 手を掴み、振り返る。そこにあの眩しいほどに焦がれた姿がある気がして。 しかしもちろんそんなものは願望の見せた夢幻にしか過ぎず、そこにいたのはただの見慣れた銀髪だった。 「あ……悪ぃ。そんな驚くとは思わなくて」 自分はきっとよほどの顔をしていたのだろう。この男にしては珍しく面食らった表情を見せた。 改めてどちらが現実かを理解して落胆の溜息をつく。いまだに振り切れずにいる自分への自嘲も少しこめて。 それからすぐに手を離し自販機から煙草を取り出した。しかし出てきた煙草の種類を見てまたも溜息を零してしまう。バニラ味の煙草なんて煙草じゃない。 「なんのつもりだよ」 「煙の臭いがぷんぷんする。少し吸いすぎじゃねぇの?」 「てめぇには関係ねぇだろ」 そんなこと自分にだってわかっているし、山崎にだってよく言われる。 「あの日」から煙草の量は間違いなく増えている。いや増え続けている。たぶんそれは弱い証拠。こんなものに頼らないと呼吸の仕方もわからないのだという。 「心配してたよ」 「勝手にさせとけ。山崎の奴、最近やたら口うるせぇんだ」 もう話すこともあるまいとまずそうな煙草を仕方なくポケットに押し込んで歩き出す。 銀時がどこかの馬鹿と同じいたずらをしでかしたものだから、つい思い出してしまった。もちろん忘れたわけではないけれど、それでも極力思い出さないようにしていた思い出たちを。 「沖田君の話してんだけど」 足が止まる。それはただの条件反射で、止まったことに気づいたのは足を止めてからだった。 「……いつの話してんだよ」 もうあれからどれだけ経ったと思っているのだ。なぜ今更その名前がでてくるのか。 「よく俺にぼやいてたよ。いつか君が自分みたいに体壊すんじゃないかって。言っても聞いてくれないけど、少しは体気遣ってほしいって」 煙草の匂いが好きだと言った。吸う仕草が好きだと言った。そして最後にいつも決まって言っていた。煙草を吸うあんたは嫌い。そんな矛盾だらけな、とあの時は苦笑したけれど。 「餞に少し禁煙したら? タール値減らすとかさ」 ずっと思っていたことがある。自分が煙草を吸わなければ、あんなに早く死ぬことはなかったのではないだろうかと。病の進行を抑えられたのではないかと。 昔、そう聞いたら沖田はたしか笑った気がする。あんたごときに殺されるほどやわじじゃねぇっての。もう一人で起き上がることもできなかったくせに強がって。 そしてやはり最後にはいつもと同じ言葉が続いた。気にするくらいなら禁煙してくだせェ。ろくに気づけなかったけど、今にして思えばいつだって沖田は土方の体を気遣ってくれていたのだ。 「悪かったな」 口にしてはみたものの誰に向けた言葉なのかは自分でもよくわからない。もういない人へなのか、いない人の心を思い出させてくれた人へなのか。 「暇なら今度飲みに行こうぜ。土方君の奢りで」 「考えとく。奢らねぇけど」 今度こそ土方は歩き出した。銀時に振り向かずに軽く手だけを振って。 名前も知らない人たちの海をもがくように泳いでいく。しかしすぐに酸素が足りなくなって手が無意識の内にポケットへ伸びた。そこにあるのはいつもの銘柄ではなくバニラ味の煙草。 ためしに火をつけてみたら本当にバニラの香りがした。自分の斜め後ろで誰かが甘い物でも食べているような錯覚をさせられる。 つい振り返ってみたら一瞬だけ見るはずのない幻を見た気がした。それは煙かアイスクリームのように一瞬で溶けて消えてしまったけれど、不覚にも泣きそうになってしまった。 34.あなたのおすきなように(土+ちび沖) 墨汁くさい。まず第一の感想はそれだった。 「お前、何してんの」 そこには驚くべき光景が広がっていた。 せっかくの畳は墨汁で黒い海を形成しかけている。その海の中心、もとい諸悪の根源は墨汁塗れの総悟である。何が起こったのかと考えを巡らせるが、どう考えても自分で頭から墨汁を被ったようにしか見えない。 「えっと、髪、染めようかと」 「髪? なんで」 たしかに総悟の髪は墨汁で真っ黒だ。しかし顔も体も真っ黒なので黒髪が似合うとか似合わないとかそれ以前の問題となってしまっている。 子供の考えることとは時に大人の理解お及ばないことであるというのは総悟と出会ってからもう十分に学んだが、それはともかくやはり一応理由くらいは聞いておかねばなるまい。たぶんこれからここを掃除するのは自分なのだろうから。 「だって俺、髪茶色いし。土方さんや近藤さんみたいに黒くしたかったんでさァ」 「言っとくが俺と近藤さんが黒いのは毛だけだぞ。断じて全身じゃねぇ」 わかっているとは思うが一応言っておいた。するとやっぱり「わかってらァ」と拗ねた返事が返ってくる。どうやら本人も何か失敗したことは薄々察していたらしい。 墨汁の海の内と外を隔てて二人は途方に暮れる。総悟のほうは知らないが、少なくとも土方はどうすれば畳を買い換えずに復元させることができるだろうかということに頭を悩ませて。 「あの、土方さん。怒ってます?」 「いやむしろ呆れてる。怒ってねぇよ。……ここ近藤さんの家だし」 上目遣いで不安そうに尋ねてくる黒い生き物に、呆れた苦笑を交えてそう言ってやった。すると安心したのか真っ黒い顔にほんのり笑顔が浮かぶ。 「お前、本当に黒くしたいの?」 「へい」 「染めてやろうか」 気まぐれに言ってみたら総悟は少し驚いたように目を丸くした。それからこくこくと何度も頷く。 「染めてくれるんですかィ?」 「まあ別にお前がそこまでしたければいいんじゃねぇの」 しかしなぜそこまでして黒に拘るのかが土方には理解できなかった。こんなきれいな茶色の髪はそうそう他に見られない。自分だけの色というのは最大級の個性に見えて、むしろ土方には羨ましかった。あとは迷子になったときに見つけやすいのが最大の利点だろう。 「俺はお前のその頭、結構好きだったんだけどな」 「えっ」 そんなことを思って何気なく口にした言葉は、なぜか総悟の全身を凍りつかせた。口をあんぐりと開けて土方を見上げている。まるで埴輪みたいだと少し思った。ちょっとかわいい。 なんてことを思って油断していたら墨汁塗れの体で体当たりを食らった。 「あァァァァ! 俺の服!」 「俺、風呂はいってきまさァ!」 土方の悲痛な叫びも聞かず、総悟は土方にぶつかって少しよろけてから一目散に風呂場へ向かって走って行った。足跡や服の裾から垂れた墨汁が床にまで転々と黒い染みを作っている。 「っておい、染めるんじゃなかったのかよ!」 「やっぱいい! やめる!」 一体なんだというのだ。さっきまで染めてやると言ったらあんなにうれしそうにしていたのに、次の瞬間にはこれだ。 子供の思考は難解だということを改めて思い知らされる。そして同時に、掃除する場所が二倍三倍に膨れ上がったことと新調してばかりの着物が台無しになったことも。 35.恋人記念日(土沖) 「土方さん知ってますかィ。今日で俺たちが付き合い始めて一年が経つんですぜ」 早朝、かなり強引に毟り取った休みを最も効率よく利用、つまりは貪るように睡眠をとっていた土方は悲しいかな、その一言のもとに叩き起こされた。 犯人は言うまでもなく沖田である。布団の上からのしかかられて、ちょっと気分がいい。なかなかいい眺めではないか。なんてことを考えている自分はたぶん確実に寝ぼけている。 「あぁ……うん、知ってるって。飯の時間なんだろ」 「違う。黙れそして起きろ」 でも今は眠いから俺の分は取っておけ、と言いたかったのに沖田は言わせてくれない。勝手に言葉を遮って勝手に話題を変えてしまう。話している内容は半分くらいしか脳まで届いていないけれど。 「起きなせェ土方さん。俺はあんたに聞きたいことがあるんでさァ」 「聞きたいことなら俺もあるぞ。今日という休みがここ一週間の総合睡眠時間が十時間弱という可哀相な俺のために俺が俺に与えた休みだということを知っているか」 「知らねェ。そんでもって興味もねェ」 なんということだ。あの暗黒の一週間が一刀両断の元に斬り捨てられてしまった。もしかして一週間ぶりの安らかな睡眠はこのままたった三時間と少しで幕を下ろしてしまうことになるのだろうかと、悲しいまでに痛ましい未来が胸をよぎる。 「……で、何の用だっけ?」 早いとこ話を聞き出してうまいこと追い出せやしないかと、未だ覚めやらぬ頭で思いながらとりあえず話を先に進めてみる。すると沖田は土方の今にもくっつきそうな瞼を指でぐいぐい押し開けながら言ったのだった。 「俺とマヨネーズ、どっちが大切?」 あれ、何の話してたんだっけ。会話に頭がついていかず、まずは記憶を起こされた時点まで巻き戻すことから始める。そして自分の上にのっかっている沖田を見て悪くない眺めだと考えて、寝ぼけていることを自覚している自分に寝ぼけていることを更に自覚させられて。 そんなこんなで思考すること50秒、ああなんだ簡単ではないかとようやく質問内容が脳にまで達したところで思った。もちろん答えは一つしかない。 「お前でマヨネーズ」 それ以外の回答は絶対に考えられなかった。なので自信を持って答えたのだが何故か沖田は唖然としてしまっている。 ひょっとしてこれは寝なおしてもいいという合図だろうか。よしそれなら寝直そう、そう結論付けたところで沖田は再度同じことを口にした。こちらも再度同じ答えをそっくり返す。 「俺とマヨネーズ、どっちが大切?」 「お前でマヨネーズ」 「俺とマヨネ」 「お前でマヨネーズ」 「お」 「お前でマヨネーズ」 「…………」 「…………」 見つめあい、沈黙が落ちること50秒。ようやく頭が醒めてきた頃、徐に沖田が動いた。じゃあ俺はこれで、とチャキッと敬礼をして布団の上から降りて逃げ出そうとする。 「待てコラ」 反射的に細い腕を掴まえて立ち止まらせる。その時は本当にただの反射行動だったのだが、掴まえてから何か沖田が言っていたことを思い出して、いいことを考えた。ついでに目も覚めた。 「一周年?」 「へい」 問われて頷く沖田。しかしさっきまでの態度と違って今は少し引き気味に。 「じゃあお祝いしねぇとな。おいしいものでもたっぷり食べて」 掴まえた手の甲に口付けを落とす。そして言葉の裏の意味に気づかれるよりも早く、華奢な体を布団の中に引きずり込んだ。そうなってようやく自分の身に降りかかっている事態に気づき暴れようともがく沖田をぎゅうと抱きしめる。温かい。また眠気がやってきそうだ。 「ひじ、土方さんっ、お祝いってのは仲良く一緒に食べるもんじゃないですかィ!」 「だから、仲良く一緒じゃん。食うか食われるかってだけで。……あ、マヨネーズねぇな。まあいーや」 「よくねェェェェ!」 実はかなりマヨネーズプレイをしてみたかった、というわけではまさかないだろうかギャンギャンと沖田は喚いて抵抗する。しかし土方は慣れた態度でその唇を塞いで、手に指を絡ませて、そして―――― 「……あれ」 気がつけば障子の隙間から見える景色は夕方だった。起こされたのは早朝で今は夕方。ということはそこそこの時間が経っているわけで。 「……?」 というかいつの間に。 首を傾げつつ周りを見回せば、いつもはきちんと片付いているはずのそこは玩具とお菓子の花畑ができあがっている。その中心に敷かれた布団の上にいるのは自分と、土方の腕をまるでぬいぐるみか何かみたいに抱きしめて眠る沖田だ。 状況から察するに、どうやら行為の途中で力尽きたらしい。その証拠が周囲に散らばっている物たちなのだろう。おそらくは暇を持て余して大量に持ち込んでみたのだろう。わざわざ土方の部屋に。 「お前、半日ずっと俺と一緒にいたわけ」 自分から仕掛けておいて勝手に力尽きた土方を叩き起こすでも殴り飛ばすでもなく、大人しく待っていたというのだろうか。この沖田が、この自分を。 一周年。それはつまり付き合い始めてちょうど一年が過ぎたということ。半日という安らかな休息はその成果だと、自惚れてもいいのだろうか。 起きたらうまいもの食いに行こうな、囁いて眠る額にキスをした。 いろんな土方と沖田の話が集まりました。 最後のは一周年記念でした。 06/12/25 |